〈冬の地〉レクタルヴ

 世界、いずれの国においても――実際の位置関係がどうであれ――果ての地として扱われる不毛の大地。〈冬〉と呼ばれる呪いに覆われ、その呪いが生み出す白い毒〈雪〉に侵され、かつては生き物がまともに住むことのできない忌むべき土地であった。
 しかしある時、その様子を憐れんだ神〈角の主〉が齎した浄化の奇跡〈雨〉によって〈雪〉が濯がれたことで再生。パラファトイ、エルテノーデン、ジノブットの三国が興るまでになる。以後、〈角の主〉は〈冬の地〉の中央に自らの居を構えて〈角の地〉とし、土地神として崇拝されるに至る。
 輝く奇跡の〈雨〉は今もなお、年におよそ二度ずつ、三国を訪っては〈雪〉を清めている。

 峻嶮な山岳、荒れ狂う海、渇いた荒野によって他国から断絶されていたが、近年はジノブット以東の荒野を越えて、細々とした外界との繋がりができ始めている。
 三国が安定してからは大きな争いもなく、他国からの侵略も無縁の地であったが――


パラファトイ

 〈冬の地〉の中でも西南に位置する島国。およそ菱形の土地は温暖で過ごしやすく、木材で組まれた風通しのよい建築が特徴的。
 海や船に関する技術に優れ、三国の循環貿易をほぼ一手に引き受ける〈冬の地〉の商人。また人間の輸送も引き受けており、エルテノーデン、ジノブットの二国が互いに行き来する際、陸路よりもパラファトイを経由する海路を利用することが多いほどである。二国の造船、築港には必ずパラファトイが関わってもいる。
 島の東側は統領家サガイが纏める人間族が、西側の洞窟地帯には統領家スルンが纏める巨人族が暮らしている二種族国家。このようにそれぞれ一人ずつ、二人の首長が居るが、何事も集会所での話し合いで決める民主政の形態をとる。寛容で穏やかな性質の人々が暮らす土地である。


エルテノーデン

 <冬の地>、三国の中央に位置する勾玉の形をした山や森など自然豊かな国。北にかけて傾斜が上がり南にかけては平地となっている。獣人と人間が共に暮らし、獅子の獣人を王とした君主制である。エルフと呼ばれる長寿の種族も存在し、エルフの森と呼ばれる未開の森に住んでいるが、他者との関わりを拒む種族であるためお互いに不干渉を貫いている。ごく一部のエルフが流れ着き王都に住んでいる者もいる。王に知恵を貸すことから賢者と呼ばれている。
 北央に位置する王都のほかに大きな街が7つあり、それぞれの特色を持って栄えている。山を削り築かれた王都は自然の要塞となっており侵入は難しい作りである。
主に鉱石や絹・布、林業、農業、狩猟が栄えていて、ジノブットやパラファトイに輸出して財政を保っている。また各都市には国が抱える軍が配置されてあり、治安を守っている。


ジノブット

 船のかたちをした国土の大半を、荒野と砂漠が占める国。
 三国で唯一〈冬の地〉の外へと繋がっているため、外つ国と交易している。外へ至る道は荒野で険しいことから、もたらされる品や情報は高くやりとりをされ、地味に乏しいジノブットにとって重要な商品となっている。そのほか国内では、遊牧を中心として農耕や製紙、麻布織りなどが営まれている。
 獣人やその混血が国民の大多数を占める。その気風は陽気で、派手好きで、新し物好きが多いとされている。しかし反面、その血の気の多さから、数少ない豊かな土地を奪い合っているため紛争が絶えない。近年王の力が強まり、各地を武力で持って平らげたことで、久方ぶりに落ち着きを見せている。


〈角の地〉

 古に神〈角の主〉が己の居処として定め居座ったという、角の如き峻嶮な峰。
 〈角の主〉によって神官として選ばれた一族〈角の民〉が少数で暮らし、神を篤く祀っている。冬の地三国からは定期的に使者が訪れ、神を詣でて〈雨〉を感謝し、時に〈雨〉を乞う。




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