レクタルヴ神話 二
それは神々が、各々の仕事を終えて地の配分を決めたときのこと。ある神が女神を見て言った。
「おい、こちらに来るのではない。今水が湧いたところなのだ」
女神は黙って俯いて、静々と去った。その先である神が言った。
「おい、こちらにも来るのではない。今種を蒔いたところなのだ」
女神は黙って俯いて、そこからも去った。その先である神が言った。
「おい、こちらにも来るのではない。今火が点いたところなのだ」
女神は黙って俯いて、途方に暮れてしまった。そこにすべての始まり、大いなる神が現れ、決め事を女神に告げた。
「お前は西の果てで、私たちから離れてひっそりと住むがよい。お前が近くに居たのでは、すべてが終わりになってしまう。まだ何もかも、始めるばかりなのに」
女神はただ頷いて、静々西へと立ち去った。そうして広く寂しい西の果ての地の他は、女神が居なくなって、他の神々の下になったのだ。
追いやられた白い姿の女神が座り、果ての大地は口を噤んでしまった。
女神は今もそこに居る。嘆きながら座っている。
――忘れられた〈冬の女神〉の神話
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